収穫レポート 2018年

収穫レポート 2018年

収穫レポート 2018年

<タイベリー畑 2018年収穫期>

長期欠品となるタイベリーピューレ

2018年の収穫期、農業は常に自然と向き合い自然を受け入れていくものですが、今年の収穫期ほど昨今の異常気象について熟考させられる年はないであろうと思います。今年のタイベリーの収穫は、昨年より10日遅く6月下旬にスタートしました。収穫の目安は、タイベリーの実が赤黒くなったときです。タイベリーは受粉期間が長く3週間程度をかけて収穫するので、2018年は7月中旬まで収穫が続きます。
2016年冬に霜の降りる寒さに見舞われ、2017年6月に猛暑の気候を迎え完熟までの時間が短く実が小さくなったため、2017年は豊作だった2016年に比べると収穫量が減っていました。そして2018年収穫期、昨夏の異常な酷暑で大地の水分が急激に失われたことに起因し、受粉後に実はつけど激減し木自体の水分量が少ないために実が大きくなりませんでした。また、6月に豪雨が続いたため日照時間が短くなり、完熟まで時間がかかりました。
これらの要因が重なり収穫も例年より遅めにスタートしましたが、収穫量は昨年の半分以下…。生産できるピューレの量も激減しました。一部枯れてしまった木々もある状態(写真参照)に、自然の厳しさを痛感しています。

来年の収穫期まで長期間の欠品となりますこと、心よりお詫びいたします。
現在、自社農場の別の畑で新たに苗木からタイベリーの栽培を開始しています。2019年の収穫状況については、収穫期に再びご案内いたします。

  • ラズベリー畑 2017年 ラズベリー畑 2018年

    <ラズベリー畑 2017年>

  • ラズベリー畑 2018年 ラズベリー畑 2018年

    <ラズベリー畑 2018年>

今年で3年目の収穫を迎えるラズベリーは、10ヘクタールの新自社農場にて栽培されています。こちらの畑は昨年の酷暑に負けることなく、今年豊作を迎えています。タイベリー畑のある農場から1km程度しか離れていないのに、このような大きな差違が生じることにスタッフ一同驚きを隠せません。
ラズベリーは東欧では手摘みされるのですが、自社農場では機械摘みで収穫され、フランス生産における人件費の高さをカバーしています。ラズベリーは、ラ・フルティエール社の1962年創業時に栽培をスタートさせた果実です。ラ・フルティエールのまさに原点ともいえるラズベリーの収穫を、このような豊作で迎えられる事に喜びを感じています。

同じく自社農場で栽培しているジュニファー種のレッドカラント(グロゼイユ)は、繊維感がありクリアでシャープな酸味が特徴です。
タイベリーとは対照的に一度で受粉するので、収穫期間は1週間程度です。6月に豪雨が続いて日照時間が短くなり、完熟が進んでいないため収穫時期が7月となります。

ラ・フルティエールのカシスは、主に繊維が多く実が肉厚なブラックダウン種ですが、新たにアンドリン種も使用しています。カシスの現存品種としてはノワール・ド・ブルゴーニュ種がとても有名ですが、実が小さく酸味が強いのでピューレよりもむしろお酒に向いた品種であると考えています。ピューレという素材に加工されたときに、最も美味しさが引き出される品種を私たちは常に選んでいます。カシスも品種改良が進みいろいろな種が登場していますが、その時々の天候なども含めた様々な条件を考慮して品種選びをしています。このようにして選ばれた果実で作るピューレは、まさにラ・フルティエールがセレクション(選定)したオリジナリティーのある美味しさとなるのです。

  • 畑に植える前のカシスの苗木

    <畑に植える前のカシスの苗木>

カシスの樹齢は長くて12年余りです。ラ・フルティエール社の寿命を迎えたカシスの樹は、2016年の冬にすべて切り倒され、2017年の冬に新たな苗木が植えられるはずでした。しかし昨冬、ブルターニュでは珍しく雪と雨が続き畑に入れなかったため、苗木を植えることが出来ませんでした。そのため現在カシスは、すべてロワール渓谷の契約農家の畑で収穫されたものがピューレ加工されています。
私たちの元に届くカシスは、世界各国の厳しい残留農薬の基準値を厳密に守っています。春先までカシスに肥料などを与えますが、受粉が終わった後は天候がカシスの実を育みます。2017年は、6月中旬の猛暑日で一気に完熟が進んだ果実を、ブリックスで管理しながら7月初旬に収穫しました。この猛暑と豪雨などの天候不順が、収穫量を大きく減少させています。カシスの実はゆっくりと熟していくと大きくなるのですが、急激に熟すと小さくなります。また、雨は恵みとなり果実が水分を充分に吸って美味しさが増しますが、雹を伴う強烈な豪雨は収穫前の実を大地へたたき落としてしまいます。まさに2017年はカシスにとって受難の年となり、収穫量は大きく減少しました。
2018年は、雹に見舞われた前年に比べると6月の長雨で収穫が遅れているものの、比較的安定した収穫期を迎えています。また、今年は新たに別の契約農家からもカシスを届けてもらっています。

8月中旬に収穫を迎える、洋梨と青リンゴ。香りが高く味わい深いウイリアム種の洋梨は、フランスで最も美味しいと言われている品種です。グラニースミス種の青リンゴは、すっきりとした酸味が特徴です。カシスと同様に、生産農家として高い信頼を得ている契約農家の農園で栽培され、それぞれピューレ加工に最も適切な時期に収穫されて届けられます。ペアーピューレは、収穫後に洋梨を追熟させてきび砂糖を加えています。グリーンアップルピューレは、収穫後すぐにピューレ加工され、まさに穫れたてそのものが味わえます。
夏は暑く、冬は適度に寒いロワール渓谷の風土が洋梨や青リンゴの栽培に向いているのはもとより、虫や風、暑さや大雨などの自然環境と日々向き合いながら対処していく生産農家の力量が欠かせません。こちらの農園の洋梨と青リンゴももちろん、ともに世界各国の厳しい残留農薬の基準を通って出荷されています。フランスのリンゴは農薬漬けで栽培されている、と揶揄されることが多いようですが、契約農家の農園では減薬農法をとり、害虫除去用の器具を設置するなど工夫を凝らしています。